心の哲学史
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心についての問題意識はプラトン・アリストテレスなどの古代哲学から連綿と続いているが、一般向け書籍で述べられる心理学史では、近代に始まる「科学的心理学」から述べられることが多い。たとえば「19世紀後半に科学としての心理学が内観から始まり、20世紀になると、それを否定したワトソンの行動主義が隆盛をきわめ、やがて認知革命に至った」と。しかしそれは心理学史の或る一面の流れであって、哲学と心理学が分岐する前の19世紀後半を凝視するならば、それとは異なり現代まで展開していくもう一つの心理学史が見えてくる。本書では、1874年という年に刊行された二つの書物『経験的立場からの心理学』(ブレンターノ)と『生理学的心理学綱要』(ヴント)を起点とし、新しい心の科学と哲学の始まりと見なした。それに対して、ブレンターノから哲学を学んだフッサールは、心の哲学としての心理学として独自の現象学を展開し、志向性・身体性・世界内存在など、心のあり方を解明する上で重要な役割を果たす諸概念を開発した。実際現在では、それらの諸概念は、新たに展開し始めた、認知科学や神経科学の知見を理解するうえでも重要な役割を演じるようになっている。本書では、このような心理学と心の哲学のいわば隠れた歴史の流れを、内観、発達心理学、脳科学、方法論論争など多様な側面から明らかにすることによって、心の哲学の歴史を展望する。[本書の内容]第一章 心の哲学史の始まり――一九世紀、科学と哲学の交叉第二章 心の科学・心の哲学・身体の現象学――内観・行動主義から心と身体への展開第三章 認知システムと発達の理論展開――他者論から現代発達研究へ第四章 心理学の哲学を基礎づけたもの――その認識論的背景と現象学的心理学第五章 認知神経科学と現象学――身体と自己の起源を探る潮流第六章 心理的なるものを超えた心理学――歩く・食べる・眠るの心理学へコラムI エーレンフェルスからゲシュタルト心理学へコラムII 意志と行為の構造化コラムIII 心の理論パラダイムと発達研究コラムIV 現象学的精神医学の興隆と衰退