あの事件を追いかけて

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犯行声明で自らを酒鬼薔薇聖斗と名乗った少年Aが切断した被害者の首を持って向かったのは、殺害現場のタンク山とは別の「暗い森」だった。ロープを伝わって目的地の入角ノ池にまで降りたと供述している。確かに崖に近い急斜面に行く手を阻まれた。ロープが見あたらなかったため、木から木へと半分落ちるようにして池に近づく。薄暗い森に響くのは、池にいる野鳥の羽ばたきだけ。じつは近隣住民さえ存在自体を知らない人が多い。整備されていない森の中にひっそりとあるからだ。池の突端は水を含んだ泥に覆われ油が浮いていた。カメラを構えて踏み出すとくるぶしまで足が沈んだ。足音に驚いたのか水鳥もおらず、枯れたアシとうっそうとした木々、暗い水面だけが視界に飛び込んできた。もちろん誰もいない。この森への入り口となる友が丘西公園は、見晴らしのいいことから地域のバーベキュー大会などが開かれていたという。また、そのすぐ近く、首の切断に使った糸ノコギリを投げ捨てた向畑ノ池では、年末のカウントダウンも開催されていたと聞く。いわば住民の憩いの場を素通りして、少年Aは生首を“鑑賞”するために崖を降りていったのである。犯行声明で自らを酒鬼薔薇聖斗と名乗った少年Aは、「懲役13年」と題する作文で、ダンテの次のような一文を引用した。「俺は真っ直ぐな道を見失い、暗い森に迷い込んでしまった」(本文「90年代 酒鬼原聖斗」より)

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