私はヤギになりたい ヤギ飼い十二カ月

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春になれば、柔らかく美味しそうな草の芽吹きに熱視線を送り、夏は、酷暑と虫と格闘しながら、茂り過ぎた草の海を刈りまわり、秋には、ヤギたちの大発情祭りを横目に冬に向けて干し草を作り、冬は、チェーンソーで常緑樹の剪定枝を伐り集めつつ、ヤギと春を待つ――。旬を外して草をもっていくと「なぜこんな季節外れなものを?」と呆れられ、一度地面に落ちた草は「それ床に落ちたものでしょ?」とそっぽを向かれる。草の山の間を頭突きをかまし合いながら食べ歩く騒然!頭突き食事会のようす。病気、発情、ヤギ同士の関係性にも気を配り…。マイペースなヤギたちとの幸福な日々を綴る、前代未聞のイラストルポ!「ヤギたちの世話をしているおかげで、私は多くの名もなき草と出会い、若芽を出してから枯れしぼみ次の草の間に沈んでゆくまでを見届けてきた。雑草とひとからげに呼ばれ、人間からは嫌われ刈り捨てられるはずの草たちを、あんなに美味しそうに食べ、楽しく生きる糧としてしまうなんて、本当に素晴らしい動物だ。」(本文より)■内容四月/卯月嬉しや待望のご馳走を刈りとる五月/皐月あおめき浮かれて噛め呑め若葉は甘露六月/緑深まり葉も茎も大きく硬く虫育ち駆け抜ける水無月梅雨は干草七月/豪雨にも耐えて文月カヨパレスからむし刈り取りかたつむり転々八月/繁る葉の月酷暑でもヤギの食欲衰えず掴み引く蔓九月/長月ながく酷暑終わらず夏枯れのあと芽吹き花咲きまるで春十月/天高くヤギ盛る秋酔えば雌雄人獣神無く月仰ぐ十一月/山眺め色づき落ちゆく葉に焦り霜降る日まで刈り回れ十二月/食べ尽くせ小春の草々霜降るまでの美味や愛おし一月/霜枯れて草がなくても大丈夫山の照葉があると山羊啼く二月/青葉恋しやうづきのヤギ飼い山駆け巡り集める照葉三月/モリモリと萌え出る美味や草伸びて枯らす無粋も湧く付章/目を凝らし耳を澄ませる十六夜照る月笑むヤギ潜むイノシシ■著者について内澤 旬子(うちざわ・じゅんこ)1967年、神奈川県生まれ。文筆家、イラストレーター、精肉処理販売業。『身体のいいなり』で第27回講談社エッセイ賞受賞。著書に『世界屠畜紀行』『飼い喰い 三匹の豚とわたし』(角川文庫)、『ストーカーとの七〇〇日戦争』(文春文庫)、『内澤旬子の島へんろの記』(光文社)、『カヨと私』(本の雑誌社)など多数。2014年に小豆島に移住し、現在は、ヤギのカヨ、茶太郎、銀角、玉太郎とイノシシのゴン子、ネコの寅雄とともに暮らす。

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