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はじめに… この作品は実際にあった事実をベースに作られたものである。 この恐ろしい話と出会ったのはかれこれ30年以上昔の話。その頃はまだデビュー前の私は、本屋や図書館に通っては様々なネタを探していた。そんな中、ふと何かの本で目にしたエピソードがこの話の根底にある。 それは第二次世界大戦中、旧ソ連で起こった実際の悲劇。ドイツ軍によってソ連兵7名が捕虜となり、国境近くの小さな教会の地下室で丸裸の状態で閉じ込められた。そして、約2カ月がたった頃、ようやく戦争は終結に向かい、捕虜となった7名の内、2名が仲間のソ連軍によって救出され【奇跡的】に生還した―、という物語である。 【奇跡的】にという言葉はある種、とても便利な言葉だ。しかし、そこに想像が介入することで物語は途端に現実性をおび、醜怪さや悍ましさ、狂気や悲憤、そして絶望などが一気に表面化する。彼らは60日にも及ぶ監禁生活の中、いったいどのようにして生き伸びてきたのか。このテーマは若かった私にはあまりにも重いテーマだった。いったんはネーム(漫画を作る上での設計図のようなもの)を起こしてみたがそれはただ単に事実をトレースしただけのもので、命の尊厳も何もないただのコマの羅列でしかなく、とても作品と呼べるような代物ではなかった。 それから10年ほどした頃だろうか。私はその頃細々とやっていた連載も打ち切りになり、生活のために、知り合いの漫画家のところでアシスタントをしたり、短編漫画を描いたり、小さなカットを描いたりして、なんとか糊口を…
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