「おまえが俺をまだ好きだと思うのは、思い込みのなせる業だ。おまえが好きだった俺は、もうこの世のどこにもいないんだ」 シュウが最先端暗号技術を提供する会社を興して二年。順調にシェアを拡大する一方で、「軍事利用する会社には技術を売らない」という特殊な経営理念を疎ましく思う者から脅迫を受けることもあった。共同経営者のジェイクとは時に体を重ねることもあるが、シュウには忘れ得ぬ男がいる。学生時代、起業の夢を後押ししてくれたその数ヶ月後に「必ず戻る」とメモを残して姿を消した恋人のアルノルト。そんなある日、五年近くも便りのなかったアルノルトが現れて……!