風光明媚な熊本・天草の島々、休暇で訪れていた大鷹鬼平はバス乗り場で八尋雪枝と知り合いになる。誘われるままに、御所浦島の同じ旅館に泊まることになる。雪枝は同じ島内に住む友人を訪ねる予定で、夕食後、友人の夫からの呼び出し電話で出かけていくが、その夜は戻らず、翌朝、溺死体としてフグの生け簀に引っかかっているのが発見された。時間をおかず東京では、農林水産省の審議官という高級官僚が西銀座の地下駐車場で刺殺された。まったく関係のない事件だった。だが、鬼平は疑問を抱いた。美しい海で、真珠貝とトラフグの二つの養殖事業を巡る問題が、事件にかかわっているらしいと鬼平は睨み、警察庁の宮之原警部に連絡を取る。社会問題を含んだ壮大なスケールで描く宮之原シリーズの快作!