内気で人見知りな末姫のシエラは、自室に引きこもってチマチマと手工芸をするのが趣味。国王や王妃が主催する舞踏会や晩餐会でもまるで存在感のない彼女は、周囲から〝変人王女〟と陰口を叩かれ、噂に尾ひれがついて「呪いの護符を作っている」などと囁かれる始末。そんなシエラは、侯爵家次男で社交界きっての美貌の貴公子と名高いジュリウスへ降嫁するよう王命を受ける。一方、国王直々にシエラを娶るよう〝頼まれた〟ジュリウス
「ディーンは……本当にわたしでいいの?」卒業式の日。クレア・コートニーは、同級生のレオと学院の中庭で大樹を見上げて感慨に浸っていた。クレアは学院を卒業後、レオの六歳年上の兄、ウィルキンス伯爵家の当主ディーン・ウィルキンスと結婚することになっている。幼い頃、初めて出会ったその日から彼は特別な存在だった。人見知りだったクレアにも優しく接してくれた初恋の相手。年の差のせいで一緒に学院生活を送ることは叶わ
男爵令嬢リリアベル・ハートネットは、五歳で王子エルヴィン・ブライティに一目惚れをして以来、身分違いの恋と知りつつも遠くから彼を見つめ続けてきた。努力の末に王侯貴族ご用達の王立学園へ入学し、彼と挨拶を交わせる関係にまではなったものの、恋心を伝えることはできないまま切ない日々が過ぎていく。しかし、高等部二年生に進級したまさにその日、リリアベルは自身が乙女ゲーム「ルミナリアの学徒」のモブキャラであり、エ
長く平和を守ってきたフィール王国には、後継者がいない。隣接するシェルクレスは強大な軍事力を持つ大帝国である。王位継承者が見通せない状況がつづけば、いつなんどき、攻め込まれてもおかしくない。女性に王位継承権が認められないこの国で、王女グラディスは女に生まれたわが身を呪いつつ、男装して男性として振る舞い、本気で「王子妃」を迎えられないかと考えている。王国の政は今や、穏健派と強硬派に分かれ、不穏な空気が
「ノーラ・ウイットリーッ! 今日をもってお前をこのパーティーから追放するっっ!」女勇者レヴィは、非力なE級の魔剣士ノーラをパーティーから外す決断を下した。国家から災害級モンスター討伐の緊急招集を受けた今、彼を同行させれば命の危険すらある——そう判断したのだ。戦力としては頼れずとも、野営や財政管理などで仲間にとっては欠かせない存在だった。仲間の反対を受けながらも追放を貫くレヴィ。それでも諦める気配を
私はこの美しい幼馴染に、何年も片想いを続けている。春の陽射しの中、赤絨毯が敷かれた階段を下りてくる新郎新婦。吉沢奈津は、初恋を実らせた姉の晴れ姿を見つめていた。新郎の弟・北島理玖にハンカチを差し出され、自分が涙を流しているのに気付いた。心配そうに顔を覗き込む理玖はいつもとは違って、スーツ姿で髪も整えられており顔の造りがよく見える。理玖に見惚れたり、はしゃぐ参列者の女性たち。彼女達のように無邪気に好
妹の代わりに死ね、と言われた前世の記憶を持つシェリル。神聖なる氷柱として、未練を振り切るように冷たい泉に飛び込んだ。北の最果ての泉で氷が溶け出し、封印されていた魔獣が現れるようになったのだ。泉を凍らせるため、氷柱を立てなければならない。選ばれたのは妹のロレッタだったのに、婚約者との挙式まであと3日だったのに……。短くも空しい前世だったが、今世はさらに短くも空しい。それでも、尊敬する皇帝陛下や皇后陛
藍衣は昨年、唯一の身内である母を病気で喪った元ヤングケアラー。今は保護猫カフェでアルバイトをしながら高校に通っている。ある日、バイト中に先輩が酔って藍衣に絡んできた。店長が留守で困っていると、止めに入ってくれたのは先ほど母の墓参りで見かけた美少年。吉祥院紅雅と名乗る金髪に空色の瞳のその客は、藍衣と同い年の高校生だった。吉祥院グループは幅広い業界でトップシェアを誇る財閥系企業グループで、紅雅はその経
かつて、ラントレア公爵家の令嬢・シャンティの前から、オーガスト・カーニッツは去っていった。それは彼女が人生で初めて味わった——苦い失恋の味。三年後、婚約者との面会を控えたシャンティは憂鬱な朝を迎えていた。婚約者である従兄のトレビィは昔からお調子者の見栄っ張りで、オーガストとは大違い。けれど、すでに生家の子爵家を出て立派な騎士になっている彼にはもう会うことも叶わない。そんな中、面会にやって来たトレビ
ロスフェルト伯爵家は王命を前に一家総出で頭を悩ませていた。ここ数年、各国で猛威を振るっている感染病・トウサに倒れた隣国の第二王子の療養先として領地クラーセンが選ばれたのだ。王族が滞在するとなると適当なもてなしで済ます事は許されない。けれど、近年領地の整備に力を入れ蓄えを放出していたロスフェルト家には全く財政的な余裕が無かった。いざとなれば支度金と持参金から出すしかないという父の言葉に、フェリーネは
ティアナは16歳の誕生日を迎えるたびに、時間を遡ってしまう。回帰するたび、祖国は滅亡の危機に瀕していた。戦火、陰謀、疫病——どれほど抗っても、未来は変わらない。この回帰を繰り返す原因を突き止めるためにも、ティアナは常に新しい選択をしなくてはならなかった。そして今回、彼女が選んだのは、一度も試してこなかった幼馴染であり王太子・アルタとの結婚。だが、ティアナの思惑とは関わりなく、アルタはすでに「結婚す
ナタリアは人の魔術に干渉する何かを発しているに違いないのだ──しかも、無自覚で。王立ヴィラーゴ魔術学園は、コルダ王国髄一の学び舎。ロベレ侯爵家の養女であるナタリアは学業成績は優秀なものの魔術の才能はからっきし、義姉オンディーヌの世話役として学園に入学していた。一方、スカウトのために学園へと訪れていた魔術騎士団長ライル・バルティンは、ひょんなことから魔術で銀猫に変身し、ナタリアの部屋へと入り込んだ。
ナタリアは人の魔術に干渉する何かを発しているに違いないのだ──しかも、無自覚で。王立ヴィラーゴ魔術学園は、コルダ王国髄一の学び舎。ロベレ侯爵家の養女であるナタリアは学業成績は優秀なものの魔術の才能はからっきし、義姉オンディーヌの世話役として学園に入学していた。一方、スカウトのために学園へと訪れていた魔術騎士団長ライル・バルティンは、ひょんなことから魔術で銀猫に変身し、ナタリアの部屋へと入り込んだ。
「道を見失うな、ナタリア。何度でも言うぞ。私を利用すればいい──私の手を、拒まないでくれ」他人の魔力を増強し魔術の発動を助ける稀有な能力を持つ者、伝説の補給魔術師"アークシリア"。臨時魔術教師のライルや義姉オンディーヌの手を借り、ナタリアは未熟ながらもアークシリアとしての力を発揮し始めていた。強く惹かれ合うナタリアとライルの距離も、もはや教師と生徒の立場を超えたものになりつつある。そして、つかの間
王城で侍女として働くアンネは、主人の部屋に飾る花を摘もうとしていたところ、見たことのない真っ黒な猫と目があった。何故かひどく胸騒ぎがして追いかけると、黒猫は突如、庭に散歩に出ていた国王ベルトランの前へと出ようとした。咄嗟に猫と国王の間に飛び出したものの、その瞬間、凄まじい光に包まれアンネの記憶はそこで途絶えてしまう。次に目覚めると、どうも身体の様子がおかしい。血管が浮いている日に焼けた大きな腕……
大東産業株式会社、通称DTIで派遣社員として勤務している美優。大企業が持つ威風と、そこに集う優秀なスタッフたちに囲まれ、自らも社員登用のチャンスを掴もうと、どんな仕事でも決して手を抜かずに対応している。秘書課の女たちに見下されても笑顔を忘れない。エリートぞろいの社内で、恋活にも余念がない。そんなある日、美優がダブルワークで勤めるスナックに、技術営業の石崎が現れた! かつて美優は石崎に密かに恋心を抱
ニコレッタは未来を見通す「未来視」の力を持っている。だが、その力は「何かを食べている時のみ」発動し、「見える未来は30秒先まで」ときわめて限定的。その微妙な力と孤児という出自から、貴族出身である他の聖女たちに疎まれ、いじめられている。そんなニコレッタに唯一優しく接してくれるのが、治癒の聖女・アンナマリア。アンナマリアから分けてもらえる食事やお菓子を楽しみに、ニコレッタは周りから虐げられる生活に何と
女神を戴き魔法の力が満ちる神秘の国アルバート。十八を迎え、初めて王家主催の夜会に参加することとなった辺境伯令嬢アマーリエは、王太子との婚約を控え鬱々としていた。幼少期になされた婚約だったが、最終的な確定はアマーリエの社交デビューの年にすると決められている。アマーリエの母は二十六年前この世界に現れた二代目聖女だ。この婚約は聖女たる母の浄化の力と聖魔法の能力を継いだアマーリエの血を王家に取り込むため、
ナイア・アインホルンは、クロウヴスナー帝国・内務省上奏室で働く新米公務官。優しい憧れの上司、アレク・ハルトマン室長補佐とパートナーを組んで、彼にほのかな恋心を抱きながら皇帝陛下への様々な陳情書を精査する日々…なのだけれど。実は、ナイアは皇帝家と密かなゆかりを持つレドウ辺境伯令嬢であり、かつて”義賊”として国を騒がせた『怪盗紳士』の娘。身分を隠し、とある信念を基に上奏室に勤めているのだ。ある日、ナイ
島全体が『王立魔法学院』という魔法の技術や歴史を学ぶ学校になっているイーシャ島。ラトナ・バインガニーは厳しい採用試験を潜り抜け、教師として、かつて青春を過ごした学院に戻ってきた。在学中からの夢を叶えたラトナをかつての恩師たちは暖かく迎え入れてくれたが、ひっそりと立つ長身の男性の姿を見つけた途端、ラトナの胸がどくりと鳴った。サフェード・カル・アーダルシュ。公爵家の次期当主にして勉学の先輩でもあり恋人
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