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あらすじ

演出家、劇作家、俳優、映画監督、小説家とマルチに活躍する松尾スズキ、三年ぶり待望の新作小説。 放送作家見習いの「俺」は、十年間師匠と仰いでいた人物が自殺した日、映画館で偶然出会った女・スミレにいきなり結婚を申し込む。スミレは離婚したばかりだった。 することのない俺とスミレは、酒浸りの日々を送るようになる。 そんな中、俺を捉えて離さないのは、師匠が手首に入れていた矢印形の刺青のことだった——。 次々と地獄の扉が開いていくような男女の転落物語でありながら、どこかに人間存在を見つめる苦い笑いがにじむ松尾ワールドの真骨頂。 (本文より) 今、自分に必要なのは、人生をなめている女だ。 酔っぱらってくれ、俺のそばで。 あと一時間でもいい。一五分でもいい。 いや、今わかった。 俺には俺より酔っ払ってくれている人間が、隣に、必要なのだ。 もう、ずっとそうだったし、きっと今日からもずっと。

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