事あるごとに助けてくれた若様――藤堂孝次との祝言が決まった花。徳川譜代の名門で七千石の旗本の妾の娘ながら、正妻や姉に虐められてきた花だったが、やっとこの家から抜け出せるのだ。大坂からの帰参が遅くなっていた父も、祝言に合わせて江戸に戻ってくるという。だが、期待に胸を膨らませる花を憎らしく睨みつける長男・一成の母・瑠璃の姿が――。倒れる父、孝次を狙う姉、そして花は牢に入れられ……! 花に幸せな未来は訪
大金の受け渡しで現金を運んでいた商人と丁稚、その用心棒二人が襲われた。商人たちは無事だったが、用心棒は一人が負傷、もう一人は「金はここだ!」と叫んで金を持って消えていた。北町奉行同心の腹違いの弟であり、深川を縄張りにする岡っ引き・勝次郎の元で手先として働く雄太は、消えた用心棒・山村宗兵衛の行方を追う。山村は本当に囮となったのか、それとも賊と共謀していたのか、もしくは金を持ち逃げしただけなのか――。
「失敗だらけの人生こそすばらしい」――町工場を営むカースケこと浩介(72歳)のもとを昔の仲間、オメダこと隆夫が訪ねてきた。だがしばらくして、隆夫は失踪してしまう……監督・中村雅俊、脚本・鎌田敏夫により、昭和の青春を象徴する伝説のドラマが初の映画化。その脚本を手がけた著者が自ら書き下ろした原作小説。生きることの切なさとやさしさに満ちた物語。映画にはないエピソードも満載。「俺たちの旅」ファンはもちろん
日本橋は木原店にある一膳飯屋塩梅屋。師走を前に主の季蔵が作る、安くて旨い昼まかないの焼き飯が好評だ。それには薬問屋の富山屋が差し入れてくれたごま油が使われていた。そんなある日、北町奉行で食通の烏谷が、塩梅屋を訪れた。実は、富山屋のごま油はお奉行のはからいであるという。烏谷の真意はどこに? 凄腕の料理人であり隠れ者の季蔵が、江戸の平和を守るため、今日も命を懸ける。伊勢海老、鮑、いくら、塩雲丹、鴨肉、
桜太は無事に生まれたものの、お妙はなかなか床を上げられず、お花が一人で「ぜんや」の厨房に立っていた。ある日、鼻が利き、とびきり上等な鰹節のにおいを纏った、二本差しのお侍が来店する。そのお侍の正体とは……。栄螺の煮汁で炊いた握り飯、竈の灰に埋めてつくる焼き栗、炙り締め鯖の茶漬け、粉山椒をたっぷりかけた秋刀魚の有馬煮もどき。料理が心を後押しする、傑作人情時代小説第九弾!
朝露のおりた草むらに埋もれるように、女がひとり横たわっていた──見習い同心・佐々木清四郎が駆けつけ検めると、女は骨と化していた。女の着物を探ると袂の裏から、繊細で美しい装飾が施された蒔絵の櫛がでてきて……ひとりで探索することを決意した清四郎は、果たして左平次を頼らずに事件を解決できるのか?(「忘れ去られた女」より)表題作の他「恨みのかたち」「怒りの左平次」の全三編収録。軍鶏鍋、鰻めし、あぶ玉丼……
看板娘・すずが母・きよと共に切り盛りしている、最福神社門前で人気の茶屋「たまや」。その一角では、占い師・一条宇之助が「がらん堂」として客を迎えている。ある夏の昼下がり、すずはたまやの戸口で、赤い首輪をつけた一匹の黒猫に出会う。すずの守護霊獣である「蒼」のことが視えている素振りをする猫を、不思議な気持ちで眺めていると、女性が愛猫・くろの名を叫びながらたまやに飛び込んできて……。占いとお祓いで、人だけ
芸者衆の行き交う檜物町にある一膳めし屋丸九は、日本橋北詰時代からの馴染みに花街の新しい客と、今日も賑やかだ。近頃は、おかみ・お高が切り盛りする店に、亭主で絵師の作太郎が趣向を凝らした宴席を仕立て、さらに彩りを添えている。トロのねぎま鍋、ふぐの焼霜造り、柿酢のなます──旬の味が客の心をほぐす一方、惚れた弱みで夫を立てるお高のまなざしを古参お栄は見逃さない。お運びのお近は、親しくなった芸者・初花の前に
出直し神社の手伝い娘・おけいは、同心の依田丑之助に請われ、練馬の子育て寺へ向かう。労咳が広がった寺には三十人近い女児が取り残されていた。おけいは子らの世話にあたり、かつて縁のあったお小夜・おひな姉妹と再会する。さらに、病に臥した尼僧の看病も託され──。一方、お蔵茶屋〈くら姫〉の主・お妙は、評判を呼ぶ竹取茶屋〈かぐや〉の噂に心を乱される。数奇な運命を背負う人びとに、縁起のよいたね銭とやり直す力を与え
屋根裏ティールーム『エミリー』には、奏園女子学院の生徒たちが集い、紅茶と焼き菓子を楽しんでいる。けれど雇われ店長でシングルマザーの姫乃は悩んでいた。奏女の高等部に通う一人娘・笑里に、最近遠ざけられているからだ。一方、笑里の前に現れた奏女のスターでミステリアスな上級生・永遠が、姫乃にある相談を持ちかける。サクほろのスコーン、バノフィーパイ、そして思い出のマドレーヌ……。姫乃が焼く英国菓子が、母娘のす
国境という概念が無くなるグローバル社会、拡大してゆく貧富の格差、圧倒的な人口を背景に発言力を増す中国、民主主義・寛容社会の限界に当たりつつあるヨーロッパ……。その一方で限界を超えて進みつつある科学。生命倫理を脅かすバイオテクノロジー、宇宙へと探索の手を伸ばす宇宙科学。日本はどのように形を変わっていくかを、脳機能科学者・苫米地英人が語り尽くす。
東京の地下に広がる巨大な街・地下迷宮街。地下道のどこからでも入ることができ、悩みを抱える者、陽の下に居辛くなった者が迷い込むという。そして街の中には、見惚れるほど美しい魔女が営む、不思議な力を持ったレトロな雑貨を売る店があるらしいが……。魔女は心の暗がりを包み込み、人々に光射す未来への縁を紡いでいく。蟠りを抱える人々と昔懐かしいレトロな魔法の雑貨が織りなす、ちょっぴりダークであたたかな連作短編集。
関西ヤクザ界に「ヒットマンブラザーズ」の異名で知られる危険な男、天空会の萩原紅。懲役囚だが刑務所内に絶大な影響力を持ち、不自由ながらも懲役の面白さを感じながら刑期を過ごしていた。出所し組に戻った萩原が引き起こした、構成員一万人とも言われる大川連合とのもめ事。十人の組員しかいない天空会だが、誰も引く気はない。難しいこと考えて、こぢんまりまとまっても、しゃあない……そして、また熱い日々がやってくる──
わずか数分の街角リポートを懸命にこなす女性タレントと駆け出し放送作家の、中継を通じての淡い交流(「4分50秒の恋人」)。現在は裏方に徹しているかつての名局アナと今をときめく人気お笑いコンビのパーソナリティー対決(「空気に飛ばして」)。放送作家・作詞家・ミステリー作家、転々と肩書を変えながらいつしか元へ戻っている剛腕の男(「どこかではないここ」)。人気アニメのヒロイン役で人気絶頂の声優の、どこか満た
小間物屋『足柄屋』の与四郎と小里夫婦のもとで働きながら、剣の道にもひとり励む小僧の太助。その太助がかつて門人として師事していた剣術道場の師範にして剣豪・井上伝兵衛が何者かに殺された! 死の真相を探ろうと与四郎・小里・太助、さらには元岡っ引きの千恵蔵や旗本の勝小吉がそれぞれ動く中、見え隠れしてきたのは悪名高き鳥居耀蔵の影だった。そして探索を通じて明らかになる千恵蔵と小里の過去の因縁……愛する人のため
現代科学に残されたフロンティアである宇宙と脳。本書では「脳が分かれば宇宙も分かる」を合言葉に、脳研究の最先端の話題を皮切りにして、宇宙創成の話へと踏み込んでいく。「なぜビッグバンが起きたのか」など、今まで解かれなかった謎も解明され、誰も読んだことのない宇宙論が展開される。本当の宇宙の姿を知ったとき、我々が普段見ている世界の姿も変わって見えてくる。話題の脳機能学者が、この本でしか読めない、全く新しい
士族の家に生まれ、化学者になりたかった幼少期は八歳でニトログリセリンを自製。戦中、こわれて入学した陸軍中野学校では課題を次々とクリアし教範を作成し直させ、蔣介石暗殺の極秘指令を受けるほどに。そして戦後は最年少の官僚として日本の復興に尽力した男……。自衛隊に特殊部隊を創った著者が自らの父の人生を通して、〈特殊戦に生きる者の心情〉と〈歴史の闇〉を描く衝撃作!(単行本『陸軍中野学校外伝 蔣介石暗殺命令を
60代後半の江子、麻津子、郁子は、都内のちいさな商店街で「ここ家」という、お惣菜屋を営んでいる。最愛の男性を亡くし悲しみを抱えつつも、にぎやかな江子、結婚して5年目の麻津子は、夫が最近よそよそしいと心配ばかり、息子も夫も早くに亡くした郁子は、ようやくひとり暮らしを楽しめるようになり――3人で、とびっきり美味しいお惣菜を作っているときが、最高に幸せ。そんなある日「ここ家」の立ち退き問題がふってわき、
第17回角川春樹小説賞受賞作沙漠の風が吹く、西域(オリエント)歴史小説の新星。「大陸的な人物が上手く描けている」北方謙三「力作。古代中国に関する豊富で確固とした知識に裏付けられている」今野敏「リーダビリティが高い」今村翔吾「可能性、伸びしろという点で一番」角川春樹誇り高き小国の皇子とその兄弟の物語。七世紀、小国でありながらシルクロード交易の要衝である高昌(こうしょう)国は揺れていた。大国ながら新興
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