鮎川哲也本人による出講が目玉企画となった鎌倉小説教室。その受講者であった五人の男女は、互いにマニアックな鮎哲ファンだと知り、長編の純本格ミステリを共同創作しよう、と意気投合した。残念ながら応募した第二回鮎川哲也賞は二次予選落ちとなったものの、手応えを掴ん…
愛知県常滑(とこなめ)市の県道で、登校途中の少女が車に轢(ひ)かれ死亡した。「原因は飛び出し」とされ、ドライバーは不起訴に。少女の母親・深見貴子は居眠り運転との確信を得、自首を勧めにドライバー宅を訪れる。ところが男はすでに殺されていた! 事故に隠されてい…
三十六も年上の夫が癌で死亡した後、山崎康子は時間とお金には不自由しないシンデレラ未亡人となった。「都会を離れたい」それは康子の切なる願望だった。懇意の信用金庫に相談すると、和歌山県にある広大な敷地と新築住宅を勧められる。内覧のため現地に向かった康子は、旅…
大阪城公園で、他殺であることは明白ながら、殺害方法はおろか直接の死因さえ特定できない奇妙な死体が発見された。被害者は、人格者と評判の63歳のタクシー運転手だった。殺される動機も見つからず焦る捜査員たち。だが、これは恐るべき連続殺人の始まりだった。一週間後、…
下呂温泉フェスティバルの目玉企画、温泉資料館のオープニングイベントの司会として、元アイドル・中川泉は故郷に戻ってきた。だが、開館式直前、理事長の竹浪が車ごと失踪。深夜になって温泉で死んでいるのが発見された。絞殺だった。警察は同時に失踪した運転手を追うが、…
バルセロナオリンピックを目前に控えた1992年、三重県津市で水泳の有力選手だった倉田聖華が殺された。それから15年。時効成立まで、あと10日となったとき、かつての同級生の呼びかけで三重県内の女たちが立ち上がった。自分たちの力で、新たな手がかりを探そうというのだ。…
金沢の内灘砂丘で奥越農業組合の融資課長、田中完一の焼殺遺体が見つかった。彼は巨額の不正融資事件に関与し、三日前から行方不明だったという。だが、勤続三十七年、無遅刻無欠席の実直な経理マンには、女の影も全くない。いったい二十二億円もの金を何に使ったのか。捜査…
10年前に浜松市で起きた夫婦殺害事件を調べ直すことになった上島警部と推理作家の吉本紀子。ごくふつうの日常を送っていた夫婦に、殺意を呼び込むようなきっかけは見あたらない。それでも被害者の過去を丹念に洗い直し、ついに真犯人を特定した。だが、その矢先、犯人が舞鶴…
日本三大松原のひとつ、福井県気比の松原で退職間近の敦賀市職員が殺されて発見された。その手には『藤早苗』の文字の書かれた雑誌の切り抜きが遺されていた。そして犯人が捕まらないまま捜査も行き詰まった半年後、武生市役所に夭折の天才画家・佐伯祐三の未発表作品を寄贈…
『小生の従妹の子に当たる公美という女性は、縁あって弊社に勤務の堂田英治君と結婚しまして幸福な家庭生活を営んでおりました。ところがある日突然たった1本の電話を契機に外出し、それっきり何の前触れもなく出奔して10年になります』突然、ミステリ作家・吉本紀子の元に…
万葉の昔より人々を魅了した吉野の山で、若い女性の全裸死体が発見された。被害者は地元の医院に勤務する看護師で、死体のそばに一人の男が寄り添い、意味不明な歌をうたっていた。当初はその男の犯行かと思われたが、彼は記憶喪失になっていて何も覚えてはいなかった。また…
推理作家・吉本紀子は週刊誌の依頼で、未解決の不可解な連続死事件を調べるため、富山へ向かう。事件の発端は2年前、「風の盆」でにぎわう越中八尾で、男が暴走してきた車に轢かれて死亡したというもの。当初は単なる轢き逃げ事件と思われていたが、車の持ち主が倶利伽羅峠…
水平線の彼方から昇ってくる日の出が美しい知多半島。観光ホテル副社長夫人・佐々木静香の生活は、なにもかもが満ち足りている。働き者の優しい夫と、豊かな暮らしと、体内に宿したわが子。しかしある日ふと気づくと、終日、彼女の後をつけ狙う正体不明の不気味なストーカー…
教頭昇格が内定、さらに愛娘の結婚を目前に控え、人生の絶頂期にある千葉雅也だが、たったひとつの齟齬が彼の運命を狂わせていく。学生の受験票を提出し忘れてしまったのだ。取り返しのつかない失態に千葉はじょじょに精神をむしばまれ、やがて思いがけない行動に出る……。教…
『私は騙されました。私の人生そのものを騙されてしまいました。どうしても仇を討ちたい。憎い人たちを八つ裂きにしてやりたい。週刊スクープとして協力してもらえないでしょうか』という一通の投書が事件の発端だった。週刊スクープの編集長に命じられて投書の女性を取材す…
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