精神科医療の未来を見据えて

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精神疾患を抱えた人が幸せに暮らす社会を実現するために患者本位の医療・福祉を追求する精神科医療の現場で奮闘を続けてきた看護師の物語------------------------------------------------------日本の精神科医療は長らく、多くの問題を抱えてきました。世界各国と比較して入院日数が長いうえに身体拘束が多く、国際社会から批判されてきたのです。また、精神科病院の職員による患者への暴行・虐待事件は今でも少なからず報道されています。そしてなにより、精神疾患を抱える人を支援する国の体制も整っておらず、病院を退院した患者が地域で安心して暮らすことができないという問題も根深く残っています。1973年に看護学校を卒業した著者は、国立病院の精神科で勤務したのち、1976年に精神科病院の閉鎖病棟の看護師として働き始めました。閉鎖病棟において患者の外出や私物所有をいっさい許されていない状況を目の当たりにした著者は、悲惨な環境を少しでもよくしようと、患者を病院の外に連れ出したり私物を持ち込めるようにしたりなど、改善を行います。しかし、一人の看護師としてできることは限られていると考えて勤めていた病院を退職し、1987年に精神疾患を抱える人のための職業支援所を開設。初めは小さな施設でしたが、徐々に利用者が増え規模も拡大し社会福祉法人格を取得するまでに成長しました。さらに著者は、医療と福祉をつないで双方から患者を支援できる仕組みをつくろうと考え、2005年に精神科訪問看護ステーションを開設しました。ステーションでは「その人らしい豊かで多様な生活を応援する」という理念を掲げ、日々理想の精神医療を追及しています。50年にわたって精神科医療の最前線で奮闘してきた著者の軌跡は、精神科医療に携わる人だけでなく、広く医療、福祉に関わる人にとって、患者本位の医療、福祉はどうあるべきかを考えるきっかけになるはずです。

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