中上健次 電子全集10 『物語文学への越境』

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中上健次“物語文学”『宇津保物語』『重力の都』と未完作『鰐の聖域』を収録。『重力の都』は谷崎へのオマージュでもある。『宇津保物語』は、同名タイトルの日本最古の長編物語の翻案作品。本編は親子四代にわたる琴の伝承譚(たん)。中上が注目したのは、「北山のうつほ」で育った仲忠の異能と、この物語的なトポスとの関係であった。エッセイ「賤者になる」(『風景の向こうへ』所収)で作家は、「うつほ」を「疑似神話空間」であり、「現実の被差別部落と同一の働きをしているのではないか」とさえ言う。波斯(はし)国(こく)に漂着し、帰国後結ばれた女に秘琴と秘曲の伝授を施す俊蔭の孫・仲忠は、「北山のうつほ」という都(みやこ)周縁の秘境から都に帰還する貴種である。この物語的な流離を、中上は自身の作品世界に引き寄せたのである。『重力の都』は、六篇からなる連作。「あとがき」で作者は、この作品を『春琴抄』を引き合いに「大谷崎の佳作への、心からの和讃と思っていただきたい。『重力の都』で物語という重力の愉楽をぞんぶんに味わった」と述べている。『鰐の聖域』は晩年の未完作品の一つ。紀州熊野サーガ(物語群)の一角をなすはずの作品だった。ここでは、サーガの中心人物・竹原秋幸の長姉、次姉の子の世代、孫の世代が登場し、新たな物語の火種を仕込まれるのである。【ご注意】※お使いの端末によっては、一部読みづらい場合がございます。お手持ちの端末で立ち読みファイルをご確認いただくことをお勧めします。※この作品にはカラー写真が含まれます。

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