失われた岬

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あらすじ

古くからの友人も、ノーベル賞作家も、その「岬」に消えた――この物語はあなたを、思いもよらぬところまで連れて行く。人が人であるというのは、どういうことなのか。練熟の著者が今の時代に問う、神無き時代の新たな黙示録。 以前から美都子が夫婦ぐるみで付き合ってきた、憧れの存在である友人・清花。だが近年、清花夫妻の暮らしぶりが以前とは異なる漂白感を感じさせるようになり、付き合いも拒否されるようになったのち連絡がつかなくなった。清花たちは北海道に転居後、一人娘・愛子に「岬に行く」というメッセージを残し失踪したようだ。彼女の変貌と失踪には肇子という女性が関わっているようだが、その女性の正体も分からない。 時は流れ約二十年後の二〇二九年、ノーベル文学賞を受賞した日本人作家・一ノ瀬和紀が、その授賞式の前日にストックホルムで失踪してしまった。彼は、「もう一つの世界に入る」という書置きを残していた。担当編集者である駒川書林の相沢礼治は、さまざまな手段で一ノ瀬の足取りを追うなかで、北海道のある岬に辿りつくが――。 やがて明らかになる、この岬の謎。そこでは特別な薬草が栽培され、ある薬が精製されているようで……。 近未来から戦時中にも遡る、この国の現実の様相。 岬に引き寄せられる人々の姿を通して人間の欲望の行き着く先を予見した、著者畢生の大作。

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